はじめに
普段は、AppleのFinal Cut Pro Xとmotionを使用して、YouTubeやVimeoなどのSNS用の動画を制作していて、動画の形式はmovやmp4で書き出すことが多いです。
しかし、テレビの放送用フォーマットには少しルールというか作法があり、今回はFinal Cut Pro Xを使用して編集した動画を、放送用フォーマットに書き出す方法について簡単に説明しようと思います。
おおまかな動画の構成は下図のとおりです。
プロジェクトの設定
まずは、Final Cut Pro Xを開いてプロジェクトを設定します。
放送で使用するフォーマットは1hショウ(01:00:00:00)で本編スタートするのが一般的です。今回は1hショウで本編がスタートするように設定します。「開始タイムコード」を選択し、そこで開始時間を00:59:00:00に設定します。
解像度・レート等は、撮影した動画の設定に合わせてください。
カラーバーを挿入する
次に、映像の初めにカラーバーを挿入します。カラーバーは名前のとおり、昔、深夜のテレビ放送終了後に流れていたようなカラフルな画像です。この時、バックグランドでは1k(ピーという高い1kHz帯の音声基準信号)を流すようにします。
カラーバー、1kの素材は、無料で提供してくださっているサイトも多数ありますので、Googleなどで検索して頂ければと思います。
素材の準備ができましたら、00:59:00:00から00:59:45:00まで45秒間、カラーバー、1kをプロジェクトに配置します。
クレジットを挿入する
次に、クレジットを挿入します。記載する内容は、タイトル、撮影日、撮影者、撮影場所、放送日などでしょうか。クレジットでは、これらの動画の情報を掲載した画像を12秒間準備します。こちらの情報は掲載の指示があれば、そのとおり作成してください。
基本的には、黒背景に白のテキストで必要事項が記載されていれば問題ありません。
クレジットは、00:59:45:00〜00:59:57:00までの12秒間です。
前捨てカット
捨てカットとは、本編が始まるまでの余白部分。放送では黒みが流れてしまったら放送事故となりますので音声を無くした映像を本編前後に、アタマとオシリに3秒ずつ挿入します。
テレビなどの放送においては、あらかじめ決められた時間に、決められた長さの映像を流すのが一般的ですが、進行上、映像を流す時間が長くなることがあります。捨てカットは、このような事態(放送事故等)に備えて用意されるものです。
前捨てカットは、00:59:57:00〜01:00:00:00までの3秒間です。
本編
本編はいつもどおり、Final Cut Pro Xで編集しましょう。
後捨てカット
前にも書きましたが捨てカットとは、本編が始まるまでの余白部分。放送では黒みが流れてしまったら放送事故となりますので音声を無くした映像を本編後にも、3秒挿入します。
放送用フォーマット(MXF形式)に書き出し
それでは最後に放送用フォーマット(MXFファイル)に書き出しましょう。MXFファイルとはmxf拡張子になっている映像や音声のフォーマットです。放送業界でよく用いられているのが特徴で、プロの使用しているカメラには拡張子mxfのファイルを作成できるものが多くなっています。
Final Cut Pro Xでは、「command ⌘」+「E」でMXF形式で書き出すことが可能です。下図のとおりフォーマットで「MXF」を選択してください。
ビデオコーデックは、「Apple ProRes 422プロキシ」で問題ありません。
普段のmp4やmovなどに比べるとかなりファイルサイズが大きくなりますので、十分書き出し先の容量を確保してからファイルを書き出してください。
ビデオコーデックについて、「Apple ProRes 44444」は超高画質で、こちらは映画やCMなど映像加工で使うもので一般的ではありません。 一般的なのは「Apple ProRes 422HQ」もしくは「Apple ProRes422」となります。 参考までに、ファイル容量は1時間の映像(50Mbps 1920×1080)で、ファイルサイズ25GB程度を目安にしましょう。なお、この時、解像度はHD(1920×1080)、フレームレート59.94P(60fps)であることは必須ですが、書き出しの形式(コーディック)は用途によって様々です。今回の設定した汎用的な映像であれば「Apple ProRes 422プロキシ」で問題ございません。
ちなみに、音声をステレオで書き出す際には、「ロール」ボタンをクリックし、下図のとおりチャンネルのプルダウンメニューから「ステレオ」を選択しましょう。
さいごに
いかがだったでしょうか。
ウェブ動画と放送の境目が無くなってきていますが、放送についての知識を持っていると他の動画制作者と差別化が図れるので、ぜひ参考にしてみてください。